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車中泊 カーネル vol.20

四国・室戸岬を巡る


Part15 大地の成りたちと恵みを体感


<<< 2014年3月10日発売 >>>



 カーネルSTAFF writer ・ photographer  岡村博文 Okamura Hirofumi

●筆者紹介●岡村博文 おかむらひろふみ
1957年生まれ。広島県在住。四輪駆動専門誌のレポーター・カメラマン。
高校時代からひとり旅が好きで、徒歩・自転車・バイク・電車・車を使い沖縄を除く日本を1周。
2001年よりは趣味のカメラで「朝日と夕日」撮影する旅を三十数回に分けて総走行距離約6万キロを走り(沖縄を除く)2010年に終えた。現在も続けて2周目に挑戦中で撮影のため全国を巡る。

観光地ではないが、大地の成り立ちと弘法大師の神秘に触れる、岡村博文らしい旅をレポートしたい。
<<<P54とP55>>>

雄大な太平洋に突き出る室戸岬を目指す

高校時代から室戸岬は単車の旅をきっかけに何度も足を踏み入れたところ。撮影のために目指すのも14年前からだ。広島県から山陽自動車道の〜倉敷JCT〜瀬戸中央自動車道〜瀬戸大橋を渡り坂出JCTまで行き、四国に入ってから2つのコースがある。1つ目は高知市に行く、坂出JCT〜高松自動車道〜川之江JCT〜高知自動車道〜南国ICで降り〜R32号〜土佐浜街道R55号〜室戸岬まで約300km。ふたつ目は徳島市に行く、坂出JCT〜高松自動車道の鳴門IC〜徳島市〜土佐浜街道R55号〜室戸岬への約330km。
どちらのコースも走ってみたが高知市から南下するコースの方が30kmは距離が短いが、昼間の明るい時間帯なら四国の東部の徳島市〜阿南〜太平洋を左手に一気に駆け抜ける爽快なコースがお薦めだ。どちらのコースを走っても、室戸岬に近づくと心地よい潮風と変化に富んだ海岸線を駆けることになり、太平洋に広がるさわやかなシーサイドドライブの醍醐味を感じることができる。


室戸岬で同じ日に朝日と夕日を撮影すること

高知県の観光地と言えば、「高知市街」「桂浜」「足摺岬」「四万十川」などが有名なところ。大きな駐車場やお土産売り場があり観光客も多い。同じ県なのに室戸岬に行くと人もまばら。クルマで高知市から室戸岬まで約80km。徳島市から室戸岬まで約140km。四国の旅行となると高知市〜室戸岬〜徳島市を抜けるとなると国道を220km以上も余分に走ることになり、1日分多めのスケジュールを組むことになるだろう。また、昼の食事も、何にしようかと迷うほど店もなく、コンビニや道の駅も室戸岬より少し離れたところしかない。
私の旅は「太陽を追いかける撮影旅」で朝日と夕日を撮影するのが目的だが、以前から想い続けていたことがある。同日で同場所にカメラの三脚を立てて、朝日と夕日を狙っていたのだ。それも同日に太陽がダルマになるという奇跡も夢として抱いていた。今回は1月2日に近くの神社で初詣をすませ、好天に恵まれるように神様にお祈りして出かけた。


大地の遺産・文化遺産を堪能する

室戸岬は海のプレートの動きによって、新しく大地が生み出されていることが監査kつ出来る世界的にも珍しいところで、岬の周囲は奇石の間を乱礁遊歩道が整備され海岸にむき出しになっている岩を見て回ることができる。
フィリピンあたりから流れてくる暖かい黒潮のおかげで亜熱帯性樹林にも出合える。
2011年9月18日に“室戸ジオパーク”として周囲の景観が保全されて“深海ゾーン”“亜熱帯植物ゾーン”“大地の誕生(マグマゾーン)”と 海と陸の地球に関する自然遺産に触れることができる。
朝日撮影で4時起床、7時30分撮影終了、朝食を済ませて、8時から室戸岬の遊歩道(片道約2.6km)の3つのゾーンをゆっくり探索した。岬の南側から“深海ゾーン”へ向かい、タービダイト層〜灌頂ケ浜(かんじょうがはま)から“亜熱帯植物ゾーン”に入り、月見ケ浜〜アコウ林〜目洗いの池〜竜宮岩と海際の整備された遊歩道を東北側へ歩く。続いて“大地の誕生ゾーン”では、マグマ活動の証拠として、タフォニ・ポットホール・フォルフェンスを見ながら歩く。
弘法大師の神秘にも触れることができる。遊歩道にあるエボシ岩〜ビシャゴ岩に近づくと、弘法大師が行水に使ったという「行水の池」もあり、国道を隔てた山際にふたつの洞窟“御厨人窟”“神明窟”がある。“御厨人窟”の中に入ることができて、弘法大師が修行中に寝起きして中から見える空と海の風景に感動して「空海」の名が付けられたいう。同じ眺めをみていると思うと、心も身も引締まり手を合わさずにはおられない。
遊歩道を往復4時間かけて歩きほんの少しではあるが、地球とお話ができた気がした。
今回の室戸での朝日と夕日撮影は不発に終わり、ダルマ太陽は夢に終わった



四国と言えば、「四国八十八ヵ所・お遍路さん」。巡礼は“自問自答”“お祈り”を模索して個々が思い思いの旅をする。千年以上も昔から続くお遍路は現代人の“癒しの旅”“自分探し”として、今も人気が高く見直されている。自身も四国へは何度となく出向いたが、「四国八十八ヵ所」「お遍路さん」「巡礼」「弘法大師」「仏さま」を目的とする旅には、まだご縁が無いようだ。


室戸岬の夕日:2011年10月撮影
室戸岬に何度か撮影で訪れるが水平線に厚い雲があり狙ったとおりの夕日が撮れない。ダルマ夕日を撮影しようと太平洋に突き出る奇石に陣取るが思うようにならない。

アコウ:亜熱帯の植物
四国では南部の沿岸域に生育する亜熱帯植物。岩肌を抱きしめるように根が垂れ姿はまるでタコの足にように見える。天然記念物に指定。

エボシ巌
太平の荒波に浸食される奇石が連なる中でも一際目立つ大きな巌。遠くからみると「烏帽子」のように見えることから名付けられた。遊歩道も岩の横を通っている。

室戸岬灯台:日本最大級の一等レンズを誇る
明治32年(1899)建造の灯台。水面から灯火は約154.7m。光到達距離は約49kmにおよび、日本最大級の直径2m60cmのレンズを備えている。目の高さでレンズを見ることができて大きさに驚く。

シオギク:国の天然記念物に指定
開花10〜1月頃で、ちょうど遊歩道の道脇に見ることができた。 四国東部と紀伊半島南部の海岸に生息しキク科の植物。

タービダイト層
白(砂)と黒(泥)のシマシマの地層(ダービダイト:乱泥流堆積物)は約1,600万年前に深海にあった。室戸は千年あたり1〜2m程度、隆起し続けているため、深海の様子を身近で観察できる。隆起するさい地層は大きく傾いた。

御厨人窟(みくろど)
この洞窟の中から見える空と海の風景に感動し、「空海」の名が生まれたとされている。洞窟から見えるクルマは2011年の撮影旅で車中泊したバン。

今回の撮影の友で宿でもあるジムニー。岬の駐車場に車中泊で2泊した。

キャプション 09
海際から室戸岬を見たところ。約13万年前の室戸半島は海だった。約6万年前は、半分くらいが海だった。
約3万年前は中岡慎太郎像の右上の展望台の高さ位が海だった。気が遠くなるようなお話。

中岡慎太郎:信念と正義の人
幕末動乱期、互いに信念を貫いた坂本龍馬と活躍した人物。坂本龍馬「海援隊隊長」と中岡慎太郎「陸援隊隊長」は歴史的転換の「薩長同盟」「大政奉還」の立役者である。

行水の池
弘法大師が悟りを開いたといわれる御厨人窟のすぐ前にあり大師が修行中、この池で行水されたと伝えられている。この日は朝日撮影の時に巡礼だろうか朝日(海)に向かってお祈りをされていた。

天狗巌:鼻の尖った天狗
岬の山から海を眺めている天狗のように見える。台風や地震によって少しづつ形を変えて今のようになった。天狗に形に見える角度は限られているので注意して探してみよう。


乱礁遊歩道(らんしょうほどう)
室戸岬の海岸沿いの、中岡慎太郎像から室戸青年大師像までを結ぶ約2.6kmの遊歩道。
太平洋の荒波に浸食された奇石が岩肌がむき出しに乱立する海岸に設けられた遊歩道。奥手には“ビシャゴ岩”が見える。

左が御厨人窟(みくろど)・右が神明窟(しんめいくつ)
約1200年前の平安時代に弘法大師が悟りを開いたところで、2つの洞窟がある。
御厨人窟で“虚空蔵求聞持法”を修行して寝起きしたという。神明窟で“三教指帰の悟り”を開いたところ。

室戸岬展望台からの眺め
「恋人の聖地」として認定されている展望台で岬が一望できる。中岡慎太郎像からまっすぐ海へ出ると灌頂ヶ浜と呼ばれ、空海が灌頂の会式(正統な継承者となる儀式)を行った場所に出る。
朝日と夕日を同じ場所で太陽を狙った場所。結果的には、1月には14ミリのレンズでは同じ位置で朝日と夕日撮影は無理かも知れない。12ミリの超広角レンズを使うか撮影時期が冬至の頃なら可能なのかもしれない。

上:2014年1月の朝日撮影。下:2011年10月の夕日撮影。いずれも太陽がダルマになるのを待っている。レンズは14〜1000ミリまでを用意しているのだが・・・撮れない!悔しい!

(<<<カーネルは年4回の季刊で刊行>>>
現在は3、6、9、12月の季刊で発売されています。

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