車中泊 カーネル vol.25

各地の夫婦岩を巡る


Part20 訪れた夫婦岩を紹介


<<< 2015年6月10日発売 >>>



 カーネルSTAFF writer ・ photographer  岡村博文 Okamura Hirofumi

●筆者紹介●岡村博文 おかむらひろふみ
1957年生まれ。広島県在住。四輪駆動専門誌のレポーター・カメラマン。
高校時代からひとり旅が好きで、徒歩・自転車・バイク・電車・車を使い沖縄を除く日本を1周。
2001年よりは趣味のカメラで「朝日と夕日」撮影する旅を三十数回に分けて総走行距離約6万キロを走り(沖縄を除く)2010年に終えた。現在も続けて2周目に挑戦中で撮影のため全国を巡る。

画像を整理していたら目に留まったのが、海岸沿いにある“夫婦岩”の画像だった。
また、岩がふたつ並んでいても“夫婦岩”ではないものも存在することがわかった。
今回は、全国を旅行中に撮影した“夫婦岩”を紹介しよう。

<<<P56とP57>>>

「全国夫婦岩サミット」が開催される

夫婦岩は、“めおといわ”“ふうふいわ”“みょうといわ”とも呼ばれ、別名で夫婦石“めおといし”“ふうふいし”“みょうといし”とも言われて、ふたつの岩が夫婦のように寄り添うように見えることから名付けられた。海面から飛び出した岩と山中の岩に大別されるらしい。
現在は、全国各地の夫婦岩、夫婦石がある市町村や関係団体により「全国夫婦岩サミット連絡協議会」が結成されて、「全国夫婦岩サミット」が開催されている。その参加者は北海道から沖縄まで約60ヵ所にもなるという。


「夫婦岩は磐座信仰で神が宿る場所」

夫婦岩は、「夫婦円満や家内安全」などの象徴として祀られているが、古くは『古事記』においても、男神[イザナギ]と女神[イザナミ]や、猿田毘古命(サルタヒコ)と天宇受賣命(アメノウズメ)などの物語があり、これらが賽の神(さいのかみ)や道祖神(どうそじん)になり、巨岩や山をご神体とする磐座信仰(いわくらしんこう)と結び付いたもののようだ。「神が宿る場所」として信仰され、注連縄(しめなわ)を飾り、鳥居を備えたりしている。地蔵や道祖神においても夫婦が一体となってつくられ、ふたつの大小の岩や石像が一対となったものが祀られている。
磐座信仰と夫婦信仰(夫婦和合として子孫繁栄や祖霊信仰)という考えが、一体となって祀られる対象となり“夫婦岩”と呼ばれているらしい。なんとなく理解できた気がした。


誰もが知る伊勢の二見浦の“夫婦岩”

三重県伊勢市の“夫婦岩”は、古来より日の出遥拝所(ようはいしょ)として知られている。沖合約700m先には「祭神・猿田毘古命縁りの興玉神石[霊石]が鎮まり、降臨する神の依り代で、常世の国から神が寄りつく聖なるところ」といわれている。夫婦岩はこの興玉神石とを拝して、日の出を遙拝する鳥居とみなされている。
日の出で有名なのは知っていたのだが、6月の夏至の前後1週間は岩の中央から日の出が昇り、その背に霊峰富士山を仰ぐことができると知った。また冬至の前後には、岩の間から満月が昇るそうだ。夫婦岩の間から富士山が見られるなら再訪する価値がありそうだ。


能登半島には“能登二見”の夫婦岩がある

能登半島で夕日撮影場所を探していた時、偶然見つけたのが“機具岩(はたごいわ)”だ。伊勢二見浦の夫婦岩に似ていることから能登の二見ともいわれている。ここは、女岩(高さ16m)の方が大きく、神様を祭る社(やしろ)もこちらの上にある。右の小さい方が、男岩(高さ12m)である。立て看板の説明では、「夕日が沈む能登二見で陰陽石が相対する真の夫婦岩である」と記してあった。ふた2つの岩が赤い糸ならぬ太い注連縄でしっかりと結ばれた神聖な佇まいであった。日没後に、撮影を終了してカメラを片付け始めた時に、岩が照明で照らされクッキリと海の中に浮かび上がった。慌ててカメラを出して再び撮影した。


偶然、目に留まった“夫婦岩”たち

全国をクルマで走っているうちに偶然、目に留まった夫婦井岩もある。山口県本州最西端の近くで響灘(ひびきなだ)を望む漁師町・二見にある“夫婦岩”は国道191号線脇の海岸に立っている。厳寒の1月2日に地元の裸の氏子が注連縄張りを行うという。
四国では室戸岬と佐喜浜町の境、鹿岡鼻にある“室戸市の夫婦岩”。近くに行くと2本の岩柱がそそり立つ感じで「室戸八景」にも選ばれているという。
九州最西端で野母半島の国道499号線を走っていると、目に入る夫婦岩がある。私の計算では4月上旬と9月上旬には注連縄の間から、軍艦島に落ちる夕日が見られるところだと思う。


勘違いの「姉妹岩」「無人島」もあった

以前に、大分県佐賀関の東端の関埼灯台から朝日撮影を試みたが、入口の門が閉まって入れなかったので南に下ると海岸線にでた。海中にふたつの岩があり、注連縄と鳥居が祀られていた。日豊海岸国定公園の一部で「日本の渚百選」にも選ばれる、“ビシャゴ姉妹岩”であった。その昔、神武天皇が東遷の途中、佐賀関沖で大ダコが守っていたイザナギノミコトの神剣を取り返し、天皇に献上した、黒砂(いさご)と真砂(まさご)という姉妹の海女を祭ったのだという。岩の由来を知らなければ“夫婦岩”にしか見えないだろう。
さらに、広島県尾道市に朝日撮影で有名な、ふたつの並ぶ大きな岩が夫婦岩だと信じていたのだが、気になったので、島を調査した知人で広島県民俗学会の尾多賀晴悟氏に確認すると、八重子島(やえこしま)というふたつの島だった。この島で神事行われるが夫婦岩とはいわないとのことだった。

私が住むところから一番近い“夫婦岩”は山中の清流にある。弘法大師が若夫婦の大げんかを仲裁したという伝説が残る。



※写真について・・・補足説明
ビジャゴ浦姉妹岩の朝日

岩の上にある鳥居に太陽を架けて撮影したら、岩に逆さまに鳥居が写っていた。カメラのレンズの屈折によるもだろうが、伝説の如く神秘的な力を思わせる一瞬だった。

・・・と説明しているが本では確認しにくかったので、もう少し拡大で見れるようにしました。
小さいのもいれると鳥居が3つ入っているのが解るだろうか?

  <<<拡大して見る>>>



石川県志賀町の“機具岩(はたごいわ)”
立看板説明:「太古能登部に鎮座する能登比盗_社(ひめの)神社の祭神が賊徒におそわれし時、取って機具を投げられた。それが飛んでこの地に至り、化して機具岩となった。この岩の祭神は渟名木入比当ス(ぬなぎいりひめのみこと)である
“機具岩” を別名:“能登二見”とも言う。日本海に沈む綺麗な夕日が見られた。私的には夕日の写真ならこれで納得の1枚である。


長崎県長崎市の“夫婦岩(ふうふいわ)”
野母崎の以下宿(いがやど)バス停そばにある夫婦岩で、左が男岩で右が女岩と高さは11mでほぼ同じ。私の計算では4月上旬と9月上旬には注連縄の間で軍艦島に落ちる夕日が見られると思う。


広島県尾道市因島大浜沖の“八重子島(やえこしま)”
自分の思い込みで夫婦岩だと信じていたが、今回調べていたら2つの無人島であり、因島にある2つの神社の秋季大祭における序幕となる祭儀が行われる神聖な島でもあった。左の島に1本の木に鳥が停まる姿に朝日が架かる光景は言葉ではあらわせない。


大分県佐賀関 “ビシャゴ姉妹岩”
偶然に撮影した岩はまったくの勘違いで夫婦岩ではなく姉妹岩だった。
命がけで海底からイザナギノミコトの御真剣を取り上げて天皇に献上した黒砂(いさご)、真砂(まさご)の姉妹の心情を察するようだった。


“ビシャゴ姉妹岩”の朝日
地元では、初日の出のポイントで知られているらしい。
岩の上にある鳥居に太陽を架けて撮影したら、岩に逆さまに鳥居が写っていた。カメラのレンズの屈折によるもだろうが、伝説の如く神秘的な力を思わせる一瞬だった。


三重県伊勢市二見町江の“立石(たていし)”“夫婦岩(めおといわ、みょうといわ)”
全国でももっとも有名な夫婦岩。左の男岩(高さ9m)、右の女岩(高さ4m)で、夫婦岩を結ぶ大注連縄は1本の長さ35mで男岩に16m、女岩に10m張られていて、岩の間は9m。


高知県室戸市の“夫婦岩(めおといわ)”
全国にある夫婦岩の中でも規模の大きい部類に入る。太平洋の荒波や強風にさらされた岩の表面には、自然の造り上げた面白い模様を見ることができる。


山口県下関市豊北町二見の“夫婦岩(めおといわ)”
伝説では、9月の末から10月の初めにかけて、馬地山から大蛇があらわれ、夫婦岩から出発して、鯖釣岬の外れにある饅頭のような形をした壁島(龍宮岩)に参拝し、夫婦岩を目標に帰るという。大蛇が参拝を終わると、夫婦岩の注連縄が切れると伝えられている。


広島県神石郡の“夫婦岩”
私が住む一番近い場所にある“夫婦岩”。家から数kmの所で山里の清流にある小さく可愛い2つの岩。地元の人もあまり知らないくらい小さくい。弘法大師が若夫婦の大げんかの仲裁で仲好くした。この岩に手を合わせると家庭円満になると言い伝えられているそうな。

※は「全国夫婦岩サミット」に参加している“夫婦岩”



(<<<カーネルは年4回の季刊で刊行>>>
現在は3、6、9、12月の季刊で発売されています。

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