秋の風、澄み渡る青色の空。オープンには最適の季節だ。
秋の季節を感じる温度を体感できるのは、乗った者にしかわからないだろうな。
今回林道を走るのは、LJ20(1972年式)31歳、J7(1955年式)48歳で、足して79歳となる。
果たして、県下でもハードなダートと言われる十方山林道(じゅっぽうざんりんどう)を走り、無事、家に辿り着くことができるのだろうか?
●見事にレストアされたジープJ7
それも自分でレストアした
今年の2月だったか、ジープオーナーの永久恒治さんの家に寄ってみると、バラバラにされたシャーシが転がっていた。ボディーからジープと分かるが年代はわからない。聞くと、三菱ジープのJ7という。車庫にあるもう一台のジープJ3とは違い、左ハンドルでとても古そうに見える。バラバラにしただけでも信じられないが、板金・溶接などを施して、走れるようにするというから驚いた。なにせ、後部の床が腐って形がないところもある。新品の部品だってあるはずがない。プロに任せるなら解るが、自分で修理して走るようになるのだろうか?。
春が過ぎ、夏が過ぎた9月。そのJ7が、公道を走って私の家まで来た。もちろん車検を取ってナンバーが付いている。話によると、塗装だけはプロに任せたが組み立てまで、自分で完成させたという。「すげ〜(備後弁)、走るんじゃ〜あ」。綺麗にレストアされたジープは、まったく古く見えない。私のジムニーLJ20と比べると、どう見ても私のほうが古く見えるのはなぜだろうか?
いっしょに走ろうという提案には、もちろん反対の言葉はなかった。
●人間の調子はOKだがJ7の機嫌が・・・
古いジープは押して走るそうだ
林道を走ろうと決めたその日までに10日ほどあった。走るルートは、広島県の西部の山口県に近い林道で入り口までが150Kmほどある。まさか、高速道路を走ろうという計画は無謀だ。特に私のLJ20は360ccで、高速道路でも「低速でしかない。林道までの道のりは数度走ったことがあるが、かなり強行軍となるのは間違いない。
永久氏から電話があった。曰く「交差点の真ん中でエンジンが掛からなくなった・・・。」車屋さんを呼んで直したという。おいおい、大丈夫かい?それを知人に見られていて、後から「あのジープは押しながら走るの?」と笑い話にされたそうだ。
次の電話では、「オイルがエンジンルームの中で吹いている・・・。」これが、出かける4日前のこと。
これから徹夜で直す。それでも駄目なら、オーバーホールしたエンジンと積み替えるという。現在のエンジンとは別のものがあるそうだ。最後には、メールで「人間の準備はできたが、J7の機嫌がすこぶる悪い。直ったら、電話する・・・。」
最終的には、出かける前日に連絡が入った。かなり不安はある何しろこのふたり、過去にテスト走行(J3とLJ20)に出かけて、まともに、目的地に着いたことがないのだ。
●広島県の東に狸、西に鹿?
助っ人は女性ジーパーしかこさん
私が勝ってに思い込んでいるのだが、広島県の西部を通過する場合は、「くのいちジーパー」の「しかこさん(※)」に通行許可を頂いておかないと、後から「どうして教えなかった!」と言われるに違い。メール送るとすかさず、「通過を許可する! 伴走で応援すると・・・。」との返事。行きのコースでは、車が停まったら電話すれば助けにきてくれるという。走行中にトラブッテも牽引してもらえるのは大いに心強い。何せJ7に停まれても、360ccのジムニーでは助けようがない。
車の調子を目・耳の体全部で探りながら林道入り口のスキー場・駐車場まで5時間かけて走った。2台ともすこぶる調子が良く、稲刈りをする風景をバックに快適に走った。夜はテントを張り、ふたりでジープやジムニーの話を酒のつまみにして、綺麗な夜空の星をみながら酒盛りをした。
※「しかこさん」について
同誌2000年6月号のウッドランドトレイルで同行取材をした方。助手席は夫です。
●長いダート路「十方山林道」
旧車では苦しい凸凹ダートコース
私は、この林道は4回目で、過去3回のうち2度、積雪で通り抜けることができなかった。今回は雪の心配はないが、車のトラブルが心配。しかし、走る準備をしていると、しかこさんより、あと少しで合流できると連絡が入った。
林道の走行距離は、14kmとも16kmとも言われている。さ〜あ、走るぞ。コースは戸河内側から吉和村に抜ける。林道に入ってからは、水越峠まで、ゆっくりとした登りで、路面は石ころが飛び出しデコボコ状態。この林道をホームグランドにしている「しかこさん」に聞くと、「いつもより少しガタガタしているかな?」という程度らしい。しかし、旧車は、縦や横の振動でどこかのパーツが外れて落ちないかと心配。ゴツンと言えば停まってみて、ギシと音がすれば走行速度を落とし、異様な臭いがすればボンネットをあけてみる。
何を好のんで、古い車で走っているのだろうと少し後悔した。天井の無い車で走ると、自分の頭上は空だけでなく、大きな木々の葉が覆い被さって、その木漏れ日は清々しい。大きな葉が太陽の逆光ですかして見ることができる。やはり林道はいい。それもダート道。歩く早さでの走行はオープンに限る。風景を楽しむというよりは、森の空気を体に吸収しながら自然をおもいっきり感じることができる。
デコボコがいいのか?旧車で走るのがいいのか?林道そのものもがいいのか?
いずれにしても、幸せな時間を過ごせる。
●昼食は川辺で食べ昼寝をする
林道に5時も間滞在したのだ
林道の中間あたりに車を駐車できるほどのスペースがあったので、近くの川辺で昼食をとることにした。綺麗な渓流の水で顔を洗い流す。10ケ月ぶりのしかこさんとの再会を喜びながら、ジープや林道の談話で盛り上がる。
腹も太り、横になると、いつの間にか寝ていた。気持ちがいい〜と感じる暇もなかった。
こういう時間がいい。何も苦労や苦痛も感じる暇がないくらい、ス〜っと時を忘れることができることがいい。こんな体験ができるのも林道をゆっくりオープンで走ることができるからだろう。心の洗濯とでもいうのかな?でも私に悩み事はあったかな?
気がつくと川辺で過ごした時間は3時間を越えていた。久しぶりゆっくりできた。でもそろそろ動かないと本日中に家に帰れなくなる。
結局、林道15kmを5時間かけて通過したことになった。実際に走った時間は2時間。このゆったり速度は、旧車と人間と自然によく合う(少なくとも私には)。秋を前に最後の緑を満喫できたことに「自然よ、有難う!」と言いたい。
また、伴走してくださった、しかこさん夫婦にも感謝。無事に故障なく走れた。今度、広島県東部を通過する際にh、連絡をいただくことを約束した。LJ20とJ7の2台は、エンジンの調子も絶好調となり、国道と県道を掛け、夕暮れの夕闇を帰った。
トラブルもなく、無事に家に着いたのは言うまでもない。
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十方山林道 |
清々しい空気と木洩れ日を直接感じながら走るのがオープン車での林道ツーリングの醍醐味。
ああ〜、気持ち良い。 |
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メーター類がインパネに直付けとなるのがJ7の特徴だとか。
ハンドブレーキも独特。 |
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昼食後、いつの間にか寝てしまった。
心の洗濯・・・。 |
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正式な名称はCJ3B−J7、元消防車仕様。年式は1955年、全部で293台製造されたうちの35台目らしい。エンジンは70PSのJH4。特徴は、テールランプがひとつしかなく、ウインカーがアポロ式、ウインカースイッチがパネルに付いているのとメーター類がパネル直付け。フロントガラスの下の導風口(ベンチレーター)がない・・・といったところ。
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レストアしたJ7の持ち主、永久恒治氏。
他にJ3Rも持っているジーパー。 |
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(((おまけ))) |
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